著作 中島 勝大
(2008.01.17)
ライオンの皮をかぶった一匹のハイエナがいた。
動物達は、そのライオンの皮に騙され、特に弱い動物達はその皮を見ただけで震え上がり
ずるい動物達は、彼がハイエナだと知りながらも、何かの恩恵を期待し命令に服従するのだった。
ハイエナは、自分を賢い者だと思っていた。確かにずる賢い知恵は持っているようだ。
ライオンの皮をかぶって他の動物達を騙すくらいだから。
彼はヌー達を見ては、「あいつら百頭よりも自分一匹のほうが恐れられている、強大だ」と
バカにして笑っていた。
ある日、ヌーの群れが移動を始めた。谷間の道を突き進むヌーの群れ。
ライオンの皮をうまくかぶる事ばかり気にしながら、それを眺めていたハイエナは
うっかり足をすべらせ谷底へ。あやうくライオンの皮で枯れ枝に引っかかった。
しかし死んだライオンの皮がちぎれるのは時間の問題だった。
ハイエナはヌー達に向って叫んだ。
「止まれ!俺はライオンだぞ!踏みつぶす気か!」と
生きる為に次の牧草地へ移動するヌー達にとって、ライオンだろうとハイエナだろうと、
どちらでもかまわなかった。
自分達の生きる為に行動をジャマするモノは、ただ、踏みつぶすだけ、
踏みつぶす事さえ気づく必要もなかった。
ヌーの群れが去った後、残ったのは、枯れ枝に引っかかったライオンの皮と
踏みつぶされて無様に死んだハイエナだけだった。
2008.03.19